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継続できない備忘録

ブログが続かない人間が書く備忘録です。

心のストレッチ

蛇口に手を伸ばすのがやっとの頃で、母が私のために生協で取り寄せてくれた黄色い持ち手の安全包丁を手にまな板の上で食材とリズムを刻む。
朝になると母が商売から帰ってくる。酒気帯びながら軽い足取りで何を作っているのかと尋ねてくる。

その日、私が作っていたのは母がよく作ってくれていた薄焼き卵で味の付いたご飯を巻いたもの。母はそれをつまみ食い。その時、母は嬉しそうに「おいしいやんか。」と言い残し風呂場へ消えていった。

 

 その日から、私は料理をするようになったのだ。

 

料理での失敗はそれほどなかった器用な私だが(自画自賛は置いておいて)小学二年の頃、食べるものが冷蔵庫になく、冷凍庫にあったものを食べることになった弟と私。使用禁止とされていた油鍋に火をつけ、カラッと揚がった冷凍食品の天ぷら。そこまではよかったのだが…。

問題は起こった。油の温度が下がらない。これでは油鍋を使ったことがバレてしまう。怒られる。窮地に追いやられた私は、あろうことか百七十度の油に氷を二つ手にとり放り込んだ。子供の思考とは本当に恐ろしい。火は消えていたにせよ、熱々の油は噴水のように吹き上がり、咄嗟にフライパンの蓋を油鍋に被せ、事なきを得たのだった。

その後、父から床が油で滑るけれど何かしたのか?と聞かれたが知らん顔をしてやり過ごした。これは、二十年近く経ってから父に話し笑い合う事ができたが、一つ間違えば大火災になりかねなかった。嗚呼恐ろしい。運がよかった。それに尽きる。

現在の私にとって、料理する時間とは心のストレッチのような、それでいて、誰かに振る舞うときはステージの上にも匹敵するもてなしの気持ちになれる。そんな貴重な時間である。

 

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